わたしたちの腸に住む、腸内細菌。その種類は数えきれないくらいといいますが、実際には何種類くらいいるでしょうか?
そして、その腸内細菌たちがわたしたちの身体に与える影響は、具体的にどのようなものなのでしょうか?
つい何年か前まで、痩せと肥満は遺伝によるものと多くの人が考えていました。ですが、実際には腸内フローラが大きく関係していることが判明しています。
その他、人の性格にも少なからずかかわっていたり、病気の治療に役立ったり……。腸内細菌って、びっくりするくらいすごいんです!
この記事では、腸内細菌の種類と役割、そして健康と美容に対する影響についてわかりやすく紹介していきます。
腸内細菌の種類は解明されていない

腸内細菌の種類には、諸説あります。
日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会では「数百種類」といっていますし、厚生労働省による健康情報サイトでは「約1000種類」と書かれています。ちなみに、Wikipediaでは「3万種類」です。
「門」で分けると4種類
これがまた複雑なんですが、細菌には分け方がいろいろあるんですね。大きく分けて、腸内細菌には4つの種類があります。
この4つの門に属する細菌たちで、腸内フローラは構成されています。4つのうち、最優占菌種とされているのが、フィルミクテス門とバクテロイデーテス門です。
4つの門に属する細菌の種類となると、途方もない数になるので(数百種類から3万種類ですから…)、ここで紹介するのはやめておきましょう。

解明されていないことの方が多い腸内細菌の世界では、日々研究が続けられています。時々、びっくりするようなニュースが飛び込んでくることも♪
大きなグループで分けると3種類
腸内細菌の、もっともわかりやすい分け方は、善玉菌/悪玉菌/日和見菌の3種類ですよね。これなら知ってる!という人も、多いのではないでしょうか?
善玉菌は、まさに「健康請負人(菌)」といえる存在。酵素やビタミンをつくって身体の機能を高め、疲労回復・病気予防・アンチエイジングなどに役立ちます。ホルモンの前駆体であるセロトニンやドーパミンを分泌し、心身ともに健やかでいられるようにバランスをとる役割もあります。
一方で悪玉菌は、腸内環境を悪くさせて排便の邪魔をしたり、腸壁に炎症を起こして毒素を全身に送り出したり、がんを引き起こすきっかけとなったり……と、まるで良い話を聞きません。
ちなみに日和見菌は、善玉菌/悪玉菌の優勢な方に味方をする菌です。2大門のバクテロイデーテス門の菌も、日和見菌です。
もっとも重要視されているのは「多様性」
大きく分けて3種類のグループを見ると、悪玉菌なんてなければすべてうまくいくんじゃないの?と思ってしまいますよね。
ところが、そうではないのです。
悪玉菌が腸内に一定数必要であるとされているのは、動物世界の食物連鎖に似ているのかもしれません。危険な肉食動物を駆除した結果、狩られることがなくなった草食動物が激増して困ってしまった……という話がありますが、その微妙なバランスを崩さないでいることも大事なんですよね。腸内細菌には腸内細菌のちょうど良い秩序があるのでしょう(想像ですが)。
腸内細菌の世界はまだまだなぞに包まれていますから、今は悪玉菌と呼ばれている菌でも、いつどんな活躍をするかわからないのです。
大切なのは多様性。腸内環境を良い状態でキープするためには、善玉菌を優勢に保つことはもちろんですが、もともと定住している悪玉菌をあまり刺激せずに、そっと飼っていくことも重要なんですよね。
腸内細菌の種類はどうやって決まる?

人は、胎内にいる間は腸内細菌をもっておらず、まったくの無菌状態です。生まれてから初めて、自分の腸に細菌を迎え入れるんですね。
母親から受け継ぐ細菌
自然分娩の場合、産道を下りてくる過程で、すでに母体の腸内細菌をうつしてもらっているそう。その証拠に、自然分娩で生まれた新生児と帝王切開で生まれた新生児では、細菌の数がいちじるしく違うそうです(どちらが良い悪いではなく!)。
さらに、その後の母乳からも細菌を受け継ぎます。母親の身体を触り、口をつけたり舌でなめたりといった行為でも、腸内細菌はどんどん赤ちゃんの身体に入り込みます。

面白いことに、同じ日に生まれた新生児のグループや同じ産院で生まれた新生児のグループなどで、腸内細菌の種類にも特徴があるんだそうですよ。
母乳の時期には、母親が食べている食事によって腸内細菌の数が変わりますし、食事をするようになったらやっぱり親子で同じものを食べますからね。母子の腸内フローラって結構似ているみたいです。
無菌・除菌は身体に良くない!
前の項目で、「腸内細菌にとって重要なのは多様性」というお話をしました。善玉菌でも悪玉菌でも、種類が多ければ多いほど良いというわけです(言い切るのはちょっと乱暴ですが)。
ものを口に入れたりなめたりする赤ちゃんの行為は、親から見ていると「あああ~!」となりますが、本人にとってはある意味で大事なことなんですよ。いろいろな細菌を身体に取り込んでいるのですから。
あまりにも神経質に子どもの周りをキレイにしたり、「パン屋さんのパンは不衛生!」なんて言って避けたり、事あるごとに除菌シートやジェルを使いまくったりするのは、成長期の子どもの抵抗力を弱めてしまうのかもしれませんね。

良いのか悪いのかわかりませんが、我が家は本当に…お恥ずかしいくらいズボラで、手洗いうがいもまともにしません。帰ってきたら「おやつー!」です。昭和かっ!
おかげで(?)子どもたちは、病気どころか風邪ひとつひきません^^;
腸内細菌の種類は一生変わらない

人が成長するにつれて、腸に住む細菌の種類が徐々に決まってきます。成人する頃には完全に定着し、その種類は死ぬまで変わることがありません。
アジア人に多い腸内細菌の種類
日本人を含むアジア人に多いのは、ビフィズス菌&バクテロイデス菌主体の腸内フローラです。すごく痩せ体質とはいかないものの、そこそこ健康な腸内フローラといえるのではないでしょうか?
つまり、ジャンクなものばかり食べていて肥満になってしまっている人でも、食生活さえ変えればもともとの腸内フローラに戻ることができるということです。
逆に、生活習慣病のリスクが高い腸内フローラ型もあり、これは北欧の人に多いそう。
もともと持っている腸内細菌の種類によって、健康が左右されるのですから、人間は細菌に支配されているといってもおかしくないのかもしれません。
種類は変えられないけど数は変えられる
じゃあ、もしわたしの腸に悪玉菌が多かったらずっと悪玉菌だらけなの!?
……と思ってしまう人も多いでしょう。
答えは、「YES」でもあり「NO」でもあります。
なぜなら、腸内細菌の種類は変えられないけれど数は変えられるからです。もともとの悪玉菌が増えるのを抑え、善玉菌の数を増やしていくのは可能なのです。
それが、いわゆる腸活・腸育と呼ばれるもの。
腸内細菌に支配されるのではなく、腸内細菌と上手に付き合って、その数をコントロールするのが大事なんですね。

どんな人でも、腸内細菌をコントロールすることはできます!
まとめ
腸内細菌の世界は、正直言って奥が深すぎて、なかなか理解が及びません。
その中で分かっていることは、以下の3つ。
- どんな菌でも身体にとって必要な側面がある
- 腸内細菌の種類は変えられない
- 腸内細菌の数は変えることができる
腸内細菌の種類と数を、自分の身体にとって最高のバランスで維持することができれば、キレイなままで年齢を重ねることも不可能ではありません!